• 学内で「脊椎動物の起源を探る」という講演会があったので聴いてきた。講演者は中国雲南省澄江のカンブリア紀動物化石の研究で有名なShu教授。専門外の者にも分かりやすい話で、とても面白かった。
  • Shu教授の話では、ここ十年くらいの間に雲南省の化石の研究が飛躍的に進んだことにより、脊椎動物の共通祖先、頭索類と脊椎動物の共通祖先、脊索動物と脊椎動物の共通祖先、棘皮動物と半索動物の共通祖先、そして、これらすべてを含む新口動物の共通祖先(正確に言えば「または共通祖先に近い生物」と付け加えるべきだろうが)だと考えられる化石が次々と明らかにされているということだった。これらの化石からは、さまざまな興味深いことが推定されるという。
  • たとえば旧口動物と新口動物に共通して見られる体節構造は、2つの系統が分離した後にそれぞれ独立に生じたのか、あるいは共通祖先がすでに持っていた形質なのか、という長い間議論されてきた問題について、Shu教授は、これは共通祖先が共有していた形質であり、体節を持たない分類群(たとえば棘皮動物や半索動物)は、進化の過程でこれを失ったのだ、という。(なぜなら、棘皮動物や半索動物の祖先と考えられる化石には体節構造が存在するから。)あるいは脊索動物が共通して持っている鰓裂という構造も、棘皮動物や半索動物と分かれる以前の祖先も持っていたもので、棘皮動物などはやはり2次的にこれを喪失したらしいという。
  • まあ、現生の生物でさえ、その系統的位置を確定するのは困難な場合が多いことを考えると、これらの化石の系統的位置の推定がどのくらい確実なものなのかは、素人には判断がつかないが、本当だとしたらとても面白い。