• 恋愛小説+叙述ミステリである。ミステリ部分の仕掛けはよく考えてあって面白いと思う。僕ももし叙述ミステリだと知らずに読んでいたら、うまく引っかけられたんじゃないかと思う。(帯に叙述ミステリであることが臭わせてあったので、注意して読んだ。ミステリを読み慣れている人が注意して読めば、まあ仕掛けは途中で気づくだろう。)ただ、恋愛小説の部分が駄目駄目なのが苦しいところ。ストーリーも陳腐ならキャラクタにも魅力がなく、文体もつまらない。叙述ミステリだと知って我慢して読まなければ、「なにこのつまらん小説」と思って絶対に途中で放り出していたに違いない。恋愛小説の部分がもっと良く書けていたら、叙述トリックの効果ももっと劇的だっただろうに。表ストーリーと裏ストーリーの落差に愕然とさせられる、というのがこの小説の眼目のはずで、だとしたら「表」のキャラクタをもっと魅力的に描いておくべきだよなあ、と思った。
  • つづいて『半島を出よ』(ISBN:434400759X)を上巻途中まで読む。ああ、村上龍だなあ、と思いつつ。まあ面白い。