第二回昆虫DNA研究会 in 広島

  • 昨日、今日と、隣のラボのW先生主催の第二回「昆虫DNA研究会」を手伝いに広島市内の東千田キャンパスへ。もちろん単なる手伝いではなく、自分が興味があるから話を聞きにいくわけだが。会場は一つ、参加者が50名ほど、講演が十数本というとてもこじんまりとした研究会だが、ふだんあまり聞かない話がいろいろ聞けて楽しかった。大澤省三先生のオサムシの話とか、最近はぜんぜんフォローしていなかったが、核遺伝子とミトコンドリア遺伝子の両者を用いて系統解析を行なう事で、とても面白そうな展開になっている。一言で言うと、かれらの系統進化は非常に複雑で、交雑によってミトコンドリアがある系統から他の系統へ入り込むというようなイベントがかなり頻繁におきてきたらしい、という話。おもしろい。動物の進化において、いったん分離するかに見えた系統(種と言っても良いが)の間で再び交雑が起こり、遺伝子がミックスされる、というイベントが、どのくらい起きていて、それが進化にどのような効果を与えてきたのか。興味深い話である。
  • 他の話もおもしろく聞いた。分類群の系統関係や生物地理学的な問題を分子マーカーを用いて解析するという話題が多かったが、ほかにも進化的に新奇な形質がどのように進化してきたのかという問題について、ホタルなどの発光昆虫をもちいて取り組んでいる話なども、非常に刺激的な話だった。
  • 少しだけ気になったのは、各地域の生物個体群間の系統関係を調べるような仕事で、ごく最近になって人為によって起こされた生物の移動というファクターを、どの程度考慮にいれるべきなのか、ということだ。これだけ外来種などが持ち込まれて広がっている現状を見れば、国内の動植物でも、人が(意図的にせよ意図しないにせよ)運んだことによる影響というのは結構、大きいのではないかと思うのだ。