論文publish

  • Molecular Biology and Evolution誌の論文、オンラインではしばらく前から読めたのですが、雑誌が発行されてページ数も確定しました。PubMed IDは17934208。ツメガエルからpiggyBacスーパーファミリーに属するTxpBというDNA型トランスポゾンファミリーを見つけて解析したという論文です。以下、簡単な解説。
  • このファミリーは非常に長期間にわたってツメガエルの中で「生き延びて」きたトランスポゾンです。DNA型トランスポゾンは一般にホストの役には立たないか、むしろ有害なことが多いので、自然選択で保存されず、1つのホストで長い間生き延びることは難しいと言われています。つまりかれらは水平転移で新しいホストを開拓しながら生き延びているわけです。実際、脊椎動物のゲノムではほとんどのDNAトランスポゾンは活性を失い、トランスポゾンの「化石」として残っているだけです。メダカのTol2トランスポゾンは今でも活性があることが知られていますが、これは比較的最近にメダカに侵入したと考えられています。ところがTxpBのファミリーは通例に反して、非常に長い期間(1億年くらい?)生き延びているらしい。
  • ではこのファミリーはどうやって長い間「生き延びて」きたのか? いろいろと調べて行くと、面白いことが分かってきました。TxpBファミリーには3つのサブファミリーがあって、そのうち2つはいまでもトランスポゾン活性(つまりゲノム内を動き回り、コピーを増やす活性)を持ち続けているらしい。ところが残りの1つのサブファミリーはトランスポゾン活性を失って、その代わりホストであるカエルの役に立つ遺伝子へと進化した(ホストに「家畜化」された)らしい、ということが分かりました。3つのサブファミリーは非常によく似た配列を持っているのですが、異なる「戦略」によって生き延びてきたわけです。
  • ということで、piggyBacの「piggy」にちなんで、「家畜化」されたサブファミリーを「Kobutaサブファミリー」、家畜化されていない「野生」のサブファミリーを「Uribo1, Uribo2サブファミリー」と命名しました。
  • 2007年、亥年のうちにこの論文が出てくれて、ほっとしています :-)。