進化学会初日

  • 京都は雨模様。バスで京大へ。受付を済ませ、佐藤さんに挨拶などしつつ、生物哲学のセッションへ。哲学研究者が何を問題にしているのか、よく分からないという印象を受けた。私の素朴な自然観と科学観によれば、この自然世界で起きている「事実」というのは一つであり、しかし人間には当然それを完全に知りつくして記述することは不可能なので、様々な形で「事実」を切り取って理解するしかない。その切り取り方には当然、たくさんの方法がありうる。それらの方法には、局面ごとに優劣があって、ある局面で役に立つ方法、別の局面で役に立つ方法、というのが並立している。生物哲学、というか生物学方法論が、そういう複数の方法の間の関係性を調べる、というような話であれば、一応理解できる。
  • でも、たとえば講演の一つにあった「遺伝的浮動はフィクションか?」というような問いは、「そうだとも言えるし、そうでないとも言える」としか答えようがない問題だと思う。極端な話をすれば、ウルトラスーパー還元主義から見れば「生物」だって「フィクション」かもしれないよね? でも「遺伝的浮動はフィクションだ」とか「生物はフィクションだ」と得意げに言ってみたところで、じゃあそういう態度から何か生産的なものが生まれるの? 何も出てこないんじゃない? ――と言われるだけのことではないのか。問題にすべきは「遺伝的浮動はフィクションか?」ではなく、「遺伝的浮動はフィクションだと考えると何か良いことある?」ではないの?
  • 昼は百万遍のタイカレーの店「アオゾラ」でポークのグリーンカレー。これが驚くほど旨かった。ココナツミルクの甘みと、スパイスの辛さが合わさって、えも言われぬおいしさ。今回の京都食べ歩きでは一番の収穫。
  • 午後は口頭発表。3会場、2回の休憩をはさんで3つのセッションは、ちょうど良いくらいの規模と思った。自分の発表はまあ85点くらい。ポインタのスイッチとスライド送りのボタンを何回か間違えた。緊張していたつもりはないのだが、やはりちょっと上がっていたかも。内容はGプロジェクトのツメガエルトランスポゾンの話。ぜんぶ話す時間はないので、家畜化されてホストの役に立っているらしいサブファミリーの話を中心に話した。しかし家畜化されていない方のトランスポゾンの話についても結構質問があり、翌日にも質問に来てくれた人もいるなど、そちらの方も興味をもってもらえた模様。そちらは動物学会で話しますので機会がある方は聴きに来てください。
  • 夜は一乗寺恵文社へ。叡電で行けば良いものを京都の街が懐かしくて、つい歩いて行ってしまったので(しかも激重のiBookを背負って……)かなり汗をかいてしまった。オシャレなお店に似つかわしくない暑苦しい客でごめんなさい。
  • 恵文社もいつまでいても飽きない本屋さんだが、あまり長居もできないので蔵書票関係の冊子(『古本屋の女房』の田中栞さんたちが関わっている)を3冊買って帰った。『本の手帳 創刊号 特集 蔵書票まつり』、『本の手帳 第3号 特集 魅惑の蔵書票』、『紙魚の手帳 36 田中栞責任編集 おしゃれな蔵書票』。蔵書票、作ってみたいなあ。消しゴム版画で挑戦してみるか……。
  • 夕食は恵文社ちかくの定食屋さん「つばめ」で。
  • 一乗寺から叡電に乗って出町柳。バスに乗ろうかとも思ったが、やはり歩きたくなって、河原町を丸太町まで、その後は寺町界隈を通って御池まで。